ウィザー日記 改め ホビー日記

徒然と趣味のことを綴る雑書

アランの子らの氏族の物語、第一話の舞台裏を回想する

■キャラクターメイク

まずはキャラクター作成ですが、実際はプレメイクしておいたものから選んでもらい、出身氏族や経歴表はわいわいロールして決めていきました。

ドナンダーの楽士は語る、コリマー部族の英雄たちの物語を。

アントールの子らの氏族のアラン、弱き者を救うヴィンガの勇士。
アンマンガーン氏族のアードガル、混沌殺しのストームブルの戦士。
アーナールドリ氏族のジョージ、祖霊の声を聞くまじない使い。

 コリマー部族を舞台としたミニキャンペーン、どの氏族の出身かは細かいことは情報過多になるので、アンチョコ表の中の情報からフィーリングで選んでもらうことに。

それぞれのプレイヤーは「リンゴの氏族とか面白そう」、「黒い槍の氏族とか響きがよさそう」、「お勧めのデフォルト氏族のアーナールドリ氏族でいいですよ」、という感じで選んでもらいました。 

◼舞台設定
ドラゴンライズ直後のコリマー部族。
ルナー帝国の支援を受けていた前コリマー族長は竜に喰われて死んだ。
都市や部族に駐屯していたルナー帝国軍は武力衝突により追い払われ、奴隷たちは解放され、ルナー帝国に組みした者は七母神を棄教するか、追放されるか、選択を強いられた。
大地の季に起きた大事件と、その直後に十分な準備もなく行われた攻防戦の結果、満足な冬支度ができぬ氏族も多かったが、寒さ厳しい闇の季がおとずれる……

 というナレーションでセッションは開始。

コリマー部族の女王レイカの命を受け物見となりて、潜む者たちを探し当てん。

コリマー部族の女王の命令で、クリアワイン砦に滞在していた各氏族の腕の立つ者が集められ、部族ミッションを受けるという導入。

コリマー部族のテリトリー内の廃村に住み着いた何者かを調査し、手勢で追い出せるならば追い出し、軍勢が必要ならば報告に戻ること、というのがプレイヤーキャラクターたちに与えられたミッションとなります。

各キャラクターの最も高い忠誠系の情熱(パッション)の関係者から間接的に依頼することで、断るのは不自然だという流れを創ります。

 

■真相

廃村に住み着いたのは、コリマー部族やリスメルダー部族から追放された無法者たち。ただし、その罪状は七母神の信仰に転向した反信者。
ある者は占領統治していたルナー帝国とより良い商売をするための、ある者は帝国の最新の文明に感化されたため、ある者は出世するため。しかし、もっとも多いのは、オーランスとアーナールダが加護を与えてくれなかった二年続いた厳しい冬の際、生き延びるために七母神の施しを受けるため。働き手を失った寡婦、後見人を失った知恵遅れの者、……
同じコリマー部族のアルノールの子らの氏族からの追放者も多く含まれている。氏族で縁者や親しかった友人が、食料などを密かに分け与えて何とか生き延びている状況。アルノールの氏族の長はそれに気がついてはいるが、妻の助言に従って見ぬふりをしている。

という全く救われないシチュエーションを用意し、その真相を段階的にプレイヤーに開示していきます。

場合によってはプレイヤー間での意見がまとまらず、ストーリーが膠着状態に陥る可能性も考慮し、暴力的な解決方法を示すNPCと、温情的な解決方法のヒントを与えるNPCを同行させます。

  • ヴァーマンディ氏族より戦士/エーガスの子、オーガス:トラブルメーカー、勇敢で粗暴で短絡的。典型的な冒険者オーランス(移動75、無秩序75、風75)
  • コンタソス氏族より中立的な老練な者:歳を重ねて妻からの助言を受け入れるようになった丸くなったオーランス人(調和75、人75、風70)。控えめだが、問われれば応えるアドバイザー。
  • ルノール氏族より案内役:氏族を離れてレイカ女王に従って国外を見て回った見識者(豊穣70、調和70、移動70)。幼い頃に育ったアルノールのテリトリー内に土地勘あり。情報提供者、心情的には同朋を殺したくはない穏健派だが、使命に反抗するつもりはない常識派。
  • アーナールドリ氏族より大地女神の信者:癒し手、そしてブレーキ役。暴力以外の方法、他に何かあるはずと擬議をていする(豊穣75、調和75)。

 

■決断のための討論

凍てつく寒い風、降り積もる雪の中、一行はクリアワイン砦からアルノール氏族の元まで行き、周辺住民に情報収集を行い、廃村にたどり着くころには真相をほぼ把握することになります。

小星の火山嶺に潜みし混沌の怪物を、雄牛の戦士の斧が割き、赤髪の勇士の剣が貫く。

混沌の魔物に捕らわれしは、コリマーの腹から産まれし七母神の侍女。
大地の声を聞く前に、七神に魂を捧げし哀れな羊たち。

 都合の悪い真実は隠されることがしばしば…。七母神の入信者となった弱者たち、弱者に寄り添う無力だが心優しい血縁者、女たちを守ると誓って立ちはばかるイェルマリオの槍使い、そして、難民たちの中に紛れ込んだ混沌の諸相を帯びたルナー帝国軍の元士官…

ストームブルの〈混沌感知〉によって正体を暴かれる元士官、混沌の諸相を使って暴れようとしますが、順当にズンバラりんと退治されます。

 

戦闘シーンというガス抜きの後、本当の意味での試練が待っています。ここでプレイヤーたちは、レイカ女王の命に従い彼らを追い払うか、それとも見ぬふりに協力するか、第三の道を選ぶか、決断を迫られます。

  • 女王の命に従う:廃村から追いたてることは、彼らに緩やかな死を宣告すること等しい。彼らは寒さと飢えで死に絶えることが明白である。一部の者の反抗を受ける事になるし、事態はあまり好転はしない。レイカ女王は七母神への転向者を厳しく扱うことが噂として広まるだろう。
  • 見ぬふりをする:同行の目附役との激しい口論となる。よほどの幸運が無い限り、NPCの目附役は女王の命令を強行しようとする事態に発展。結果的には、より酷い結果に陥る。
  • 第三の道:プレイヤーのアイデア次第。

第三の道については、ゲームマスターとしては幾つか想定はしていました。

  • 無慈悲なる死:自然の驚異による緩慢な死ではなく、誇りある戦いの上での死を与えようとする道。ヒューマクト的な発想パターン。
  • 新たな調和の道:無法者となったのは、その部族の中でのこと。リスメルダー氏族からの追放者をコリマー部族に新たなる氏族として受け入れ、コリマー部族からの追放者をリスメルダー部族に新たなる氏族として受け入れさせる交渉工作をする。慣習法の抜け道による詭弁を発展させるイサリーズ的な発想パターン。
  • 大脱出行:無法者達を受け入れる可能性があるターシュ王国の反帝国派のテリトリーに逃れさせる。護衛や支援が必要となるが、それを慈悲として女王に出させる交渉は必要。

そして、プレイヤーたちは決断を下します。

女王の命を受けたれど、哀れな羊が飢えて凍えるは正義に非ず。
止めるアントールの戦士を退けて、雄牛は羊を連れ帰る。

魔の冬の悲劇を忘れるな、彼らは我ら、我らは彼ら、まじない使いは警告す。
赤髪の勇士は別の道を示す、刃にかけず、見捨てず、共に歩む第三の道を。

 第三の道の選択です。

経歴表でグレート・ウインターで餓死凍死しそうになった経験のある祈祷師助手のジョージは、きっと見捨てることはしないだろう、という意見が一行の心に刺さります。

また、弱者を守る女冒険者ヴィンガならば、きっと弱者である難民たちを見捨てるはずがない、との意見も出ます。

実際のプレイでは、他にもルーン親和性の特性値ロールにより、魂の声を引き出すことで、第三の道を選ぶという合意に至ります。

 

■女王レイカへの直談判

ある意味では女王の命令を現場判断で無視し、難民たちを追放するな、殺すな、受け入れて助けろ、という感情に突き動かされた行動となりますが、とてもオーランス人らしくていい選択です。

 

かくして女王を恐れず諫言は発せられ、賢明なる女王は過ちを正す。

かくして、無法の烙印を押されし赤き羊は希望を見出す。
コリマー部族は新たなる氏族を迎えたり。
そを導くは恐れを知らぬアラン、弱き者を救うヴィンガの勇士。

命令無視してクリアワイン砦に帰還し、女王の下した命は間違っている、自分が責任取るから難民たちを受け入れさせろ!と正面から〈雄弁〉をかますアラン

この技能判定の成功率を高めるため、ルーン魔法と精霊魔法とパッション増強という地道な工夫があったのは言うまでもありません。

結果、素晴らしい出目にも味方され、女王と部族の重鎮たちの説得に成功。

もちろん、責任を持つというのだから、二百人近い難民を率いてもらうことにします。アラン個人の名のもとに難民たちを引き受ける=氏族集団として自立する、という第三の道に進んでもらうことにしました。

 

■そして次の物語へ

 氏族として自立するためには、住むための土地、生きるための食料、そして共同体として存続するための守護精霊ワイターが必要となります。

三回構成のミニキャンペーンの、二話目と三話目のテーマがこの時点で決まりました。

  • 家畜を持たない難民たちを養うために、数百匹単位で牛や羊のような家畜、あるいはそれに値する動産を手に入れること
  • オーランス人社会の中で七母神を信仰する者たちを分け隔てなく守ってくれるワイターを見つけ出し、氏族の守護精霊となってもらうこと

いずれも超ド級の難易度の試練です。

普通に考えたら無理難題ですが、無理難題はヒーロークエストで打開するのがグローランサです。

これにて、竜の目覚めの年の闇の季にありし物語を語り終えん。
ドナンダーが語りし次なる物語は、またの機会にて…

さて、続きはまた別の機会に振り返りね思い出しながら綴るとしましょう。

wizthewizard.hatenablog.com

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